九州発こだわりの「美」を世界へ発信
~見つけて売るプロと見せるプロが営む唐津のギャラリー~
2020年6月、唐津市の駅前にのびる呉服町商店街に、九州産コスメを中心に取り扱うお店「JCC POP UP GALLERY」がリニューアルオープンしました。こちらでは、ジャパン・コスメティックセンター(以下、JCC)の活動を紹介し、唐津や佐賀県産といった九州各地の地産コスメを展示販売しています。
明るい店内には900点ほどの商品が並び、そのほとんどは大手の流通には乗らない、1点1点こだわってつくられた商品たちです。キラキラと華やかな空間は、訪れるだけで少々テンションがあがります。
今回は、そんな空間を仕入と販売の両面から支える、松田裕子さんと安部里砂さんのお二人にお話を伺いました。
生まれ変わった商店街にJCCのお店をオープン
唐津市の呉服町通りといえば、昔はアーケードがあり、お店も人通りも多いイメージがありましたが、地方都市の例にもれずシャッター街化が進んでいました。2016年に老朽化によりアーケードが撤去された後は、昔ながらの商店に加え、いまでは地酒を唐津焼のお猪口で楽しんだりできるバルや、ミニシアターやホテルのある複合施設などもでき、石畳の明るい道に生まれ変わりました。
―もうすぐこちらに移られて1年ですね。
松田:そうですね。もともと2019年11月にバスセンターのある大手口センタービルの1階で期間限定のショップとして始まり、ありがたいことに再開を望んでくださるお客様も多かったことから、呉服町商店街でリニューアルオープンすることができました。
―POP UP GALLERYには、普段はだいたい安部さんがおられますよね。JCCには店舗スタッフとして入られたのでしょうか。
安部:はい、2019年の秋からです。もともと関東で仕事をしていたのですが、両親が高齢になったこともあり、故郷の唐津に3年ほど前に夫と帰ってきました。接客業の経験は少なかったのですが、長く広告代理店で働き、大手化粧品会社の主催する数千人規模の展示会運営などもおこなっておりましたので、そういった経験が活きていると思います。
―実は、最近呉服町を通る時にこちらを覗くのが、楽しみだったりします。唐津コスメティック構想のことは知っていても、具体的に地産コスメが買える場所がなかなかなかったので、友人などにも勧めづらかったんですが、こちらがオープンしてから紹介しやすくなりました。コスメ商品が主なので棚が華やかで、見ているだけでも楽しいです。それにディスプレイや商品の配置などが落ち着く雰囲気で、全体的にお洒落ですよね。
安部:ありがとうございます。1か月半くらいのペースで配置などを少しずつ変えています。生産地域で分けたり、製品の種類で分けたり、季節の行事を取り入れたディスプレイにしたりと、少しずつ増えてきた常連のお客様にも飽きない工夫をして、自分がお客様の立場だったら、と考えるようにしています。
実はラッピング検定の資格を持っていたり、フラワーアレンジメントの講師もしているという安部さん。お店で接した時は柔らかでおっとりした印象だったのですが、とても研究熱心で行動力のある女性です。
―実際にお客様と一番接するお立場ですが、JCCに入られて何か変わりましたか。
安部:唐津や玄海町のいろいろなものが化粧品の原材料になっているということを、実は初めて知りました。ふつうに生活しているとわからない部分ですよね。実際に「唐津ってこんなことやってるんだ!!」とおっしゃるお客様も多いんです。
店内には、唐津や玄海町に限らず、九州各県の良いものを多数取り揃えておりますので、そういったものをきちんとご紹介できる場になればいいと思っています。もっと知ってもらえるように、地元の皆様へのアピールも今後の課題です。
唐津に根づく“地域商社”を設立
POP UP GALLERYを実際に運営しているのは、JCCの子会社である株式会社KaratsuStyleです。代表取締役の藤岡継美さん(file07で後日紹介予定)と、仕入・販路開拓を担当する松田裕子さん、店舗担当の安部さんの3人は、JCCとKaratsuStyleを兼務し、日々その業務にあたっています。
―松田さんはいつ頃JCCに入られたのでしょうか。
松田:2017年4月です。一般社団法人であるJCCの子会社である地域商社の株式会社KaratsuStyleが設立された時です。それまでは海外の商社に勤めていました。
“地域商社”とは、地域の多くの関係者を巻き込み、地域の資源をブランド化し、地域内外に販売する組織のことです。一般的に商社というと売れるものを探してきて利ザヤを稼ぐというビジネスモデルになりますが、そこに地域のものという条件が加わります。
必ずしも唐津産や佐賀県産ではなかったとしても、会員企業様や地域の方の商品を、国内外の店舗に並べていく活動をするため、KaratsuStyleが立ち上がりました。
松田:作り手のパッションを売り手が理解して商品を引受け、地域の特色あふれる素材を使った商品をKaratsuStyleで引き受けたいと思っています。将来的には、JCCに関わった企業様の商品の開発やマーケティングのお手伝い、営業代行といったことができるようにという思いでKaratsuStyleはつくられました。
―POP UP GALLERYには、どういった役割があるのでしょうか。
松田:コンセプトとしては、JCCやKaratsuStyleに関わりのある企業様の商品のご紹介も兼ねた販売スペースです。いまはなかなか人の往来ができない状況ですが、視察などでJCCやKaratsuStyleの活動についてご紹介すると、どんな価格帯の商品なのか、というご質問をいただきます。そこで実際にまとめて商品がみられる場所やパンフレットなどをつくりました。
また、天然素材からつくられた化粧品を使う方のなかには、切実な肌トラブルを抱えているために「肌にあう」安心感がないと化粧品は使えないという方が多いんです。そういった方には、商品を実際に手に取れ、試せる場所があったほうが安心しますよね。オンラインの時代であってもそこは変わりません。やはり商品を実際に手に取れる場所があるということが重要なんです。
とはいえ、なかなか唐津に足を運べない人のために、福岡市の商業ビルイムズ内に「九州コスメプロジェクト」の棚を設けたり、百貨店などで開催される九州産の商品を集めた催事への出店なども随時行ってきました。加えて、コロナ禍でさらに重要性が増してきた通信販売については、福岡のEC専門の会社に協力を仰ぎ、楽天市場やYahoo!ショッピングなどの通販サイト内に「九州コスメプロジェクト」のページを作り、オンラインでも気軽に購入できる環境をつくりました。
通販サイト BLANC LAPIN(ブラン・ラパン)Yahoo!ショッピング店
「知る人ぞ知る」ニッチな商品を見つけ出す
―JCCのどういったところに魅力を感じられましたか。
松田:化粧品産業を基軸に唐津の経済活動を活発にしたいという方針も面白いと思いましたし、実際そういった活動は必要なのではないかと思いました。地域の原料を使った「知る人ぞ知る」商品を、自分の手で探し、育て、販売につなげていけるということに魅力を感じました。
モノを自分の手でつくることよりも、欲しいと思っている人のもとにどうやったら届くのかを考えることに興味を持ったという松田さんにとって、現在関わっているコスメ製品も"商材”の一つだと言います。ですが、松田さんが自ら集めてきた“商材”のひとつひとつについて語る熱量には圧倒されます。
大手の商流に乗っていない、しかし良いものを人に届ける、知ってもらうというところに、仕事としての面白さを一番感じるそう。
「こちらで売っている商品はすべて試しました」とPOP UP GALLERYの店内を見ながら平然と話す松田さん。「九州コスメプロジェクト」として店内で扱われる商品は、唐津・佐賀県産だけではなく、九州各県から2,3のブランドがバランスよくピックアップされています。
九州内で取扱いたいブランドを見つけると地道なテレアポに始まり、現地への訪問、卸値の交渉といった一連の流れがあるそうですが、その中で製品に込められたコンセプトや想いを作り手から直接聞き続けてきました。
「ひとつのブランドにつき1時間以上は、話せますよ」
そう語る松田さんからは、“売る人”としてのプロの矜持を感じました。
唐津の“美と健康”の発信基地に
―最後にPOP UP GALLERYや、お二人の今後の夢や目標についてお聞かせください。
松田:ここ(POP UP GALLERY)はあくまでも発信基地として捉えていて、化粧品というものを軸に、国内や国外ということにとらわれることなく、モノづくりでも新しいサービスでも、「とりあえず唐津に行けば話を聞いてもらえるよね」というような場所になればいいと思っています。
安部:「ここに来ると生活にハリがでる」と言っていただいたこともあり、うれしかったですね。「ついつい寄ってしまう」「ちょっと変わったおもしろいものがある」など、お客様に気軽にお立ち寄りいただける、地元の皆様とつながれる場所にもしていきたいです。
よほどの幸運に恵まれない限り、良い製品を作るだけでは、それが本当に必要な人のもとに適切なかたちで届くかはわかりません。情熱をもって届ける人=売る人がいてこそ、ということをお二人から改めて教えていただきました。
2013年に発足したJCCは、実績を積み上げて製品づくりに関わり、情報を発信し、実際行っていることを見せられる段階にようやく差し掛かっています。
POP UP GALLERYという“場”は、それを象徴するものではないでしょうか。
「日本の“美と健康”のことなら唐津に行けばなんとかなる」未来へと、田舎町の商店街にある小さなお店には、大きな夢が詰まっています。
■ JCC POP UP GALLERY 10:00-18:00 定休日:火曜日
〒847-0844 佐賀県唐津市刀町1514番地 びんつけやビル1F
(呉服町商店街 だがし屋さん斜め前)
TEL: 0955-79-6015 E-mail: info@karatsustyle.com
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