韓国の化粧品業界は、その洗練された製品と斬新なブランド展開で国際的な注目を浴び続けています。特に、K-Beautyとして知られる韓国の美容文化は、世界中の消費者から多くの支持を得ています。この記事では、近年の韓国の化粧品市場に焦点を当て、業界内での動向や未来の展望を探っていきます。
① 2023年の韓国化粧品市場動向
「韓国の化粧品産業、世界で3位の座を守る」
2022年、韓国の化粧品業界は㈱LG生活健康や㈱アモーレパシフィックなどの国内大手企業と多国籍企業が、低成長経済、グローバル化、流通環境の急変など不確実な経済環境の中で激しい競争を繰り広げ、世界経済の不況や新型コロナウイルスの影響といった困難に立ち向かいつつ、着実な成長を遂げてきました。
10兆5,099億ウォン(1兆930億円)[対前年比21.3%増]の輸出実績を達成し、過去最高を記録したことにより、韓国は2020年に続き世界第3位の座をキープしました。さらに、2022年の化粧品貿易収支は9兆ウォン(9,360億円)[対前年比28.6%増]を突破し、10年連続で黒字を達成しました。この健全な経済成果は、韓国の化粧品が国内外での信頼性を高めていることを示していると言えます。
化粧品産業全体の生産実績は16兆6,533億ウォン(1兆7,319億円)[対前年比9.8%増]、輸入実績は1兆4,937億ウォン(1,553億円)[対前年比11.7%増]を記録しました。特に新型コロナウイルス感染症の影響によって減少していたメイクアップの生産実績は、前年比6.7%増加しました。製品のタイプ別内訳を見ると、スキンケアが全体の61%を占めて首位を保持し、次いでボディケアが12%、メイクアップが11%、ヘアケアが10%となり、これら4つの製品が全体の94%を占めることがわかりました。
また、韓国では効能・効果が強調された専門的な機能性化粧品が一般的な化粧品とは異なる位置づけとされています。機能性化粧品は化粧品と医薬品の中間的な性格を持つ製品とされ、一般の化粧品とは異なる規制が適用されます。これらの製品は安全性だけでなく、美白やしわ改善など特定の効果を強調しており、2022年における機能性化粧品の生産実績は4兆9,891億ウォン(5,189億円)で、全体の30%を占めるなど、市場での存在感を示しています。
② K-Beautyの未来と化粧品育成戦略 (2022)
新型コロナウイルス感染症が広がりを見せる中、韓国の化粧品業界はその地位を固め、代表的な輸出産業としての役割を強化してきました。2022年、韓国政府は化粧品産業を国の新たな輸出主力産業として発展させるため、世界でもトップクラスの化粧品輸出国に飛躍することを目指し、"(K-Beauty)未来化粧品育成プラン"を発表しました。このプランは、研究開発、規制改革、ブランド向上、産業基盤の整備など、幅広い側面で化粧品産業を支援するための重要な取り組みを含んでいます。
未来化粧品育成プランの主要課題
研究開発 (R&D)
化粧品産業の基礎素材や新技術の研究開発を拡大推進
技術水準の向上を目指し、2022年から2030年までの期間内に、世界の平均技術水準の95%達成を目指す
日本からの原料輸入比率を減少させるための取り組みを推進
規制改革
製造者の表示義務を見直し、オーダーメイド化粧品の新設や知的財産権侵害への対策を強化
中小企業の商品競争力向上を図るとともに、オーダーメイド化粧品による新規雇用の増加を期待
韓流ブームに便乗する企業を支援
ブランド向上
新南方市場 ※注1への進出をサポートし、国内外での広報活動や大規模な博覧会の開催を計画
K-Beautyのブランド価値を高め、新たな輸出市場を開拓
化粧品輸出市場の多角化に注力。2018年の新南方市場占有率11%から、2022年には20%へ拡大
産業基盤の整備
生産拠点や研究開発施設、専門人材養成、化粧品専門展示会の運営を強化
K-Beauty産業の成長を支える基盤を構築し、代表拠点である「K-Beautyクラスター」の役割を拡大
※注1 新南方市場:ASEAN10カ国とインド
③ K-Beautyの革新総合戦略 (2022)
2020年1月27日、韓国は「K-Beauty革新総合戦略」を発表しました。この戦略は、2024年までの期間内に、世界トップ100の企業数を現在の4社から7社に増加させ、新たに9万人の雇用を創出することを目指しています。
革新総合戦略の主要課題
技術開発 (R&D)
皮膚-ゲノム分析センターを設立し、国別の皮膚遺伝子データを収集
モデル事業を推進し、2025年までに9ヶ国で8,200人の参加を目指す
化粧品の基礎紹介と、情報通信技術の融合による研究開発を強化
産業インフラ
K-Beauty総合支援センターを通じて、オンラインでの企業コンサルティングを提供
国際的なK-Beautyスクールを設立し、専門人材養成課程を拡充
化粧品産業の成長を支える「化粧品産業育成法」の制定を推進
規制改革
オーダーメイド型化粧品制度を活性化し、販売許可証申告手続きを簡素化
化粧品固有の特性を考慮した柔軟な表示・記載事項の適用を推進
規制合理化を施行し、産業環境の改善を図る
海外進出
輸出国別のオーダーメイド進出支援を強化
K-Beauty体験・広報館を設立し、年間600社の製品を展示支援
売り場数とポップアップブースを拡大し、K-Beautyの国際的な展開を促進
④ 韓国化粧品産業のバリューチェーンの変革
韓国化粧品産業のバリューチェーンは、複数の領域で変革を遂げつつあります。
1) 研究開発領域
肌を有害環境から保護し、肌バリアケアのための素材と製剤の開発に集中
デジタルプラットフォームの成長に伴い、人工知能 (AI)、モノのインターネット (IoT)、仮想現実 (VR)、ビッグデータなどの技術を組み合わせたスマートビューティー環境の創出が進行中
2) 製造生産領域
エコ、エシカル消費、持続可能性への関心が高まり、サプライチェーン全体の連携による役割とコンプライアンスの重要性が増大
産業トレンドの急速な変化に応じて、原料開発や製造・生産企業の役割が強化
3) 流通領域
非対面消費の広がりに伴い、オンライン中心の流通チャンネルが拡大
個人化の時代により、消費者は直接製造企業に製品を注文・購入するD2C(Direct to Consumer)の流通チャンネルに対する関心が増加
4) マーケティング領域
オンライン流通チャンネルの変化に合わせて、消費者に間接的な体験を提供するライブコマースやインフルエンサーマーケティングが中心に
デジタルマーケティングはさらに拡大し、Eコマースプラットフォームとの連携を通じた戦略が注目
最後に
韓国の化粧品産業は、変化する経済環境や新たな消費者のニーズに適応しつつ、着実に成長を遂げています。2023年の化粧品市場動向やK-Beautyの未来戦略、バリューチェーンの変革など、様々な側面から韓国化粧品産業の展望を探ってきました。これからも、本テーマに関するさらなる記事を届けてまいります。お楽しみに。
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Text:ハム・ジュンス
ジャパン・コスメティックセンター 韓国コーディネーター
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